Column

Zyoo@Mixology Boutique 日比谷 No.1

ミクソロジーとは

カクテルの世界における「ミクソロジー」という言葉を知ったのは、南雲主于三さんとの出会いからでした。南雲主于三さんは日本におけるミクソロジストの第一人者として知られています。南雲さんは、「スピリッツ&シェアリング」という会社を2009年に起業されており、今ではシンガポールも含め7店舗を展開。この冬には京都にもバーをオープン予定です。

バーテンダーが、既存のレシピを守るクラシックの担い手、職人としたら、ミクソロジストは改革者であり、新しい技法や素材を探求して独自のレシピを創造する人。南雲さんは、さまざまな食材から独自のリキュールやスピリッツを開発しており、とくに日本の食材を使って、日本の四季や食文化、さらには時代までを表現するという、まさに液体を通したアーティストだと思います。その点においても、以前から非常に親近感を覚える人物でした。

十数年前に、パリでMiwaを運営する佐藤武司さんから初めて南雲さんを紹介されて、八重洲のバーで彼が考える料理とカクテルのマリアージュを楽しんだ記憶は今も鮮明に残っています。こうしたことがきっかけとなり、今はパリの百貨店ボン・マルシェそばでコーヒーショップWANIのオーナーシェフとして活躍する山口杉朗さんの当時のレストラン「ボタニック」にて、山口さんの作る料理と南雲さんの作るカクテルのマリアージュのイベントを佐藤さんと開催したご縁もありました。当時はまだフランス人もコンサバで、ワイン以外の飲み物を信頼していませんでしたが、このイベントは大盛況で、料理にカクテルを合わせるという画期的な体験を心から堪能してくれました。

Hapusa ✖️ Zyoo

さて、私にとっての新しい挑戦、ジンジャーベースのZyooの希釈タイプドリンクの味わいを絶賛くださり、日比谷Okurojiにあるブティック兼バーMixology Boutiqueに置いてくれたのは感激でした。店長、荒関バーテンダーが即興で作る革新的なZyooのカクテルにも驚きが溢れます。

荒関バーテンダー曰く、大地を象徴するような、凝縮した日本の生姜の味わいを引き立てようと、初めに考えてくださったのは、インド産のジン「HAPUSA」とのマリアージュでした。

ヒマラヤ山脈のなんと4000mの高地で自生するジュニパーベリーを使用した、土っぽいスパーシーさが特徴的。荒関さんがおっしゃるには、普通のジュニパーベリーの2倍もの大きさだそう。

強烈な生命感を感じる味わいで圧倒されるのですが、それと贅沢に生姜を使用した我々のZyooとのマリアージュが秀逸でした。日本のZyooとインドのHAPUSAに共通する大地の味わいは補完しあいながら、日本の香り高い黒文字や優しい酸味のレモンが「HAPUSA」を受け止めてます。

越後薬草とコラボレーションして生まれた伊勢屋酒造のアマーロリキュール「SCARLET」の「Radice」もほんの少し加えてアクセントに。Radice(ラディーチェ)とは根(ルート)のことで、根を中心に30種以上のボタニカルを使用したアマーロ。やはり土っぽさ、大地の深みのある複雑さをプラスし、三位一体にするという荒関さんのアイディア。ミステリアスな側面をさらに浮かび上がらせていました。

Zyooのテーマは、日本独自の食文化に根づく「薬味」。それを通して香りの世界を広く伝えていくことにあります。スパイスだけでは表現しきれない、日本ならではの味わいの構成。それは体に優しく、素材の持つ力を引き出す、自然と共に生きる知恵から生まれたものだと思います。

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